裁量労働制の違法適用 過労自殺で労災認定
「裁量労働制を社員に不当に適用したとして、平成29年末に是正勧告を受けた大手不動産会社で、その適用を受けていた社員が過労自殺し、長時間労働が原因として労災認定されていたことがわかった」という報道がありました。
労災認定されたのは、平成29年12月。関係者によると、男性は転勤者の留守宅を一定期間賃貸する業務を担当する社員で、入居者の募集や契約・解約、個人客や仲介業者への対応などにあたり、契約トラブルへの対応で顧客や仲介業者からの呼び出しに追われていたとのことです。自殺の後、遺族が労災申請を行い、労働基準監督署が男性の勤務記録などを調査したところ、死亡前1か月の残業時間は約180時間に達していたようです。
同社は、企業の中枢部門で経営に関わる企画の立案などに携わる社員に限り導入できる企画業務型裁量労働制を、本来は認められない営業部門などの社員にも適用していましたが、是正勧告を受けて、本年3月末での裁量労働制の廃止や、未払い残業代の支払いを決めています。
安倍首相は、裁量労働制の対象拡大を働き方改革関連法案から削除し、来年以降に提出を先送りする方針を示しましたが、労災認定が公になったことで「現行の制度でも過労死を招く濫用を防げていない実態が露呈した」などと厳しい意見が出ています。改めて、裁量労働制の対象拡大への反発が強まりそうです。
また、関連法案から削除されていない「高度プロフェッショナル制度」に関する議論にも影響があるかもしれません。健康確保措置を、いかに実効性の高いものにするか?など、慎重な議論が求められそうです。
〔確認〕現行の裁量労働制の概要(厚労省HP)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/sairyo.html