時間外労働上限規制・高プロ等 労基法改正案 一本化の審議(傍聴レポート)
平成29年8月30日、厚生労働省で、第138回労働政策審議会労働条件分科会が開催されました。
審議会では、2015年国会提出済の改正法案と、働き方改革関連の法規制として本年6月5日に建議された時間外労働の上限規制等の内容を一本化し、労働基準法改正案とすることについて労政使で議論が交わされました。
罰則付き労働時間の上限規制については、労使双方とも、早期の法案成立すべきという共通認識はあるものの、平成27年提出済の法案の内容については、時間外労働が60時間を超えた場合の割増率を50%に引き上げを中小企業にも適用する時期や、高プロや裁量労働対象業務の拡大については意見が分かれました。
使用者側委員からは、一体化については問題ないとの立場での発言がありましたが、一方、労働者側委員からは一体化に反対であるという発言が相次ぎました。
労政使のそれぞれの主な意見は以下のようなものです。
〈厚労省 事務局〉
平成27年2月にはまとまらなかった時間外労働の上限規制について、本年6月にまとまったことを踏まえ、既に提出している労働基準法の改正案自体も、それぞれが条文としても関わり合っているため、一体とした法案として国会提出の準備をしているところであり、労政審でもご議論いただきたい。
〈労働者代表委員〉
平成27年2月の建議でも、高度プロフェッショナル制度の創設・企画業務型裁量労働制の対象業務拡大には反対との意見を付してきたものであり、一体化した法案とすることは反対である。
現行制度でも、柔軟な働き方は可能であり、その中で長時間労働になっている等の課題が解決されていない現状を踏まえると、懸念を払拭しないまま、新たな制度の導入や対象業務の拡大をすることは納得できない。
高プロの対象となるような業務に関して、労働時間に対して残業代が払われる働き方と、個人が自由に時間をコントロールし、一定の報酬が支払われる働き方を選択できるというニーズはあると考えられる。その場合の懸念となる事項について具体的に話し合っていくべきではないか。
時間外労働が60時間を超えた場合の割増率が中小企業が猶予されていることにより、同じ労働をしても大企業と格差があるというダブルスタンダードになっていることはおかしい。中小企業にも早期に適用すべきである。
〈使用者代表委員〉
日本の企業を取り巻く環境は非常に厳しい。競争力という観点からも、人材獲得、グローバル化への対応から考えても従来の慣行を見直し、長時間労働抑制・健康確保措置と柔軟な働き方の選択を可能にし、生産性を高めていくためにはバランスに配慮しつつ、一体化して臨時国会に提出すべきである。
「働き方改革実行計画」が労使の代表も参加して決定されたものであり、その中で、長時間労働抑制政策とともに、高度プロフェッショナル制度の創設・企画業務型裁量労働制の法改正について国会での早期成立を図るとされていることもあり、一体化して提出すべきである。
中小企業では、人手不足が深刻化している。マンパワーが不足している中小企業には、60時間超の50%の割増率の適用については、十分な期間を取ってほしい。
労政審に提出された詳細な資料は、以下からご覧いただけます。
厚労省HP「第138回労働政策審議会労働条件分科会」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000175847.html
※次回、139回の審議会は9月4日に開催されます。