メリット制の在り方を検証(労災保険制度の在り方に関する研究会)

厚生労働省から、令和7年4月4日に開催された「第5回 労災保険制度の在り方に関する研究会」の資料が公表されました。

今回の議事は、労災保険制度の在り方について(徴収関係等)です。

主に、メリット制の在り方が検証されています。

メリット制の効果が管理コストに見合っているのかという視点などから、メリット制の趣旨や現状などをまとめた資料が公表されています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

<第5回 労災保険制度の在り方に関する研究会/資料>
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56726.html

労災保険メリット制とは

労災保険料は、事業の種類別に異なります。危険度の高い業種ほど保険料率が高くなります。
労災保険料率表 ➡ 令和7年度の労災保険率等について(厚労省)

労災保険メリット制とは、事業主の災害防止努力をより一層促進する観点から、当該事業の災害の多寡に応じ、労災保険率又は労災保険料を上げ下げする制度です。

労災保険メリット制の対象となる事業所

労災保険メリット制の適用を受けるのは、一定規模以上の事業場に限られます。
具体的には、連続3年度全期間において、以下の規模以上であった事業場となります。

(1)労働者数が、平均100人以上
(2)労働者数が、平均20人以上100人未満であって、労災度係数が0.4以上
   【労災度係数】 労働者数 × 労災保険料率(非労災保険料率(0.6)を減じる) 
(3)一括有期事業の場合、年間元請工事の確定保険料の額が40万円以上(労働者数は関係ありません)

※メリット制が適用される場合、厚生労働省からの「労災保険料率決定通知書」により通知されます。
※事業主からの申請を必要とするものではなく、事業主の希望により適用・非適用を選択できるものではありません。

連続する3保険年度の全期間において、上記いずれかの規模要件を満たした場合、翌々年度の保険料に適用されます。

労働者数20人以上100人未満の事業場で、メリット制の適用を受ける業種別の具体的人数
事業の種類の分類番号事業の種類メリット収支率算定期間の最低労働者数 
令和6年度以降
林業02.03すべての林業※継続事業の場合に限る20人
建設業35建築事業(既設建築物設備工事業を除く。)
※継続事業の場合に限る
45人
製造業41食料品製造業82人
42繊維工業又は繊維製品製造業100人
44木材又は木製品製造業33人
46印刷又は製本業100人
51非鉄金属精錬業63人
61その他の製造業75人
運輸業71交通運輸事業100人
72貨物取扱事業
(港湾貨物取扱事業及び港湾荷役業を除く。)
51人
その他の事業91清掃、火葬又はと畜の事業33人
93ビルメンテナンス業75人
96倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業68人
98卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業100人
99金融業、保険業又は不動産業100人
94その他の各種事業100人

メリット制が適用される場合の労災保険料

メリット制の規模要件に該当する場合、よくも悪くも、自動的にメリット制の適用を受けることになります。
メリット収支率に応じて、40%減から40%増の範囲で労災保険料が変動します。
ここでは、一般的な継続事業と、確定保険料が年間100万円以上の一括有期事業の増減率をご紹介します。 

【増減表1 継続事業・一括有期事業】
メリット収支率メリット増減率
立木の伐採の事業以外の事業立木の伐採の事業
10%以下40%減35%減
10%を超え20%まで35%減30%減
20%を超え30%まで30%減25%減
30%を超え40%まで25%減20%減
40%を超え50%まで20%減15%減
50%を超え60%まで15%減10%減
60%を超え70%まで10%減10%減
70%を超え75%まで5%減5%減
75%を超え85%まで0%0%
85%を超え90%まで5%増5%増
90%を超え100%まで10%増10%増
100%を超え110%まで15%増10%増
110%を超え120%まで20%増15%増
120%を超え130%まで25%増20%増
130%を超え140%まで30%増25%増
140%を超え150%まで35%増30%増
150%を超え40%増35%増

ご参考までに

労災保険のメリット制は、自動車保険のノンフリート制度と似ています。
「保険を使うと保険料が上がるから今回は保険を使わない」という判断をされたことのある方も多いのでは?
ですが、労災保険の場合はそういうわけにはいきません。

営業所を複数持つ企業においては、全営業所を一括の労働保険(労働保険の継続一括)とすることも可能です。
一括後にメリット制の対象となる規模要件に該当した場合、一事業場の労災事故の影響は、全労働者の労働保険料に適用される可能性があります。

きりん事務所では、様々な可能性をご提示し、貴社に最適な労働保険の選択をアドバイスしています。