タクシー運転手の残業代をめぐる注目の裁判 審理差戻し
東京都大田区のタクシー会社に勤務する運転手14人が、実質的に残業代などの割増賃金が支払われない賃金規則は無効だとして、未払い賃金の支払いを求めた裁判で、最高裁第3小法廷が、規則を無効とした二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻す判決を言い渡したとの報道がありました。
同社の賃金規則では、基本給のほかに、売上に応じた「歩合給」を支払うことになっていましたが、
歩合給を計算する際、残業代などに相当する金額を差し引く
という規則があったということです。
一審・二審では、この規則は、割増賃金の支払い義務について定めた労働基準法37条の趣旨に反し、公序良俗違反で無効だとして、会社に計約1460万円の支払いを命じていました。
これに対し、最高裁は、規則について、「当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできない」とし、有効か無効かを改めて高裁で審理するべきだとしました。
最高裁の考え方は、「賃金規則で定めた独自の計算方法を使っても、同法が定めている水準の残業代が実質的に支払われていれば適法」といったもので、残業代が実質的に支払われていたかどうかを検討するため、審理を同高裁に差し戻したようです。
とらえ方は色々ですが、「公序良俗違反で片づけるのではなく、実質的な判断を」ということのようです。
タクシー業界やトラック業界では、今回問題となっているような賃金の取決め(残業をしても歩合分しか払われない)が一般化しているようです。これに対して司法がどのような判断を下すのか?裁判の行方に注目です。