通勤にも安全配慮義務 過労事故死として和解勧告(地裁支部)
「徹夜勤務明けにバイクで帰宅途中、事故死した新入社員の両親が、過労による睡眠不足が原因として勤務先に損害賠償を求めた訴訟で、平成30年2月8日に、横浜地裁川崎支部が、通勤中の事故にも企業側に安全配慮義務があるとして「過労事故死」と認めた上で、和解勧告した」といった報道がありました。
同訴訟を担当した裁判長は、和解勧告で、事故の原因は居眠りだったとし、過労状態を認識していた企業側が公共交通機関を使うよう指示するなどして事故を避けるべきだったと指摘。和解金の支払いに加えて、終業から次の始業までの休息の確保(11時間以上)、仮眠室の設置、深夜タクシーのチケット配布など、事故後に同企業が講じた再発防止対策に引き続き取り組むことを和解条件としたとのことです。
また、過労による事故死が多数発生している可能性にも言及し、「本件を契機に「過労事故死」の労働災害の事故の類型が公になり、今後、過労死、過労自殺とともに社会全体として防止に向けた対策が十分に推進されていくことが期待される」とも述べたとのことです。
画期的な和解の決定だったとして、多くの報道機関が報じています。
企業としては、このような「過労事故死」のおそれがある場合には、安全配慮義務があることを意識して、適切な対策を講じる必要がありそうです。
〔参考〕安全配慮義務
『労働契約の内容として具体的に定めずとも、労働契約に伴い信義則上当然に、使用者(企業)は、労働者を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っている』とするもの。
「陸上自衛隊事件(最高裁昭和50 年2月25 日第三小法廷判決)」や「川義事件(最高裁昭和59 年4月10 日第三小法廷判決)」などの最高裁判例で確立され、現在では、法律にも、使用者が当然に安全配慮義務を負うことが規定されています(下記の「労働契約法第5条」)。
<労働契約法第5条>
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。