競業避止義務の明確化について 厚労省の取組や裁判例などを紹介(内閣府のWG)
内閣府から、令和6年4月17日に開催された「第5回 働き方・人への投資ワーキング・グループ」の資料が公表されました。
今回の議題に、競業避止義務の明確化が含まれており、厚生労働省、経済産業省、公正取引委員会などから資料が公表されています。
厚生労働省の提出資料では、競業避止義務に関する学説、厚生労働省における取組、競業避止義務に関する裁判例が紹介されています。
在職中の競業避止義務に関する学説
在職中については信義則上、労働契約の付随義務として競業避止義務が認められることで学説・裁判例とも一致してい
る。(荒木尚志「労働法 第5版」有斐閣(2022))
在職中の競業避止義務は、守秘義務と同様、誠実義務の一環として信義則上、当然に発生する(労契3条4項)。在職中に競
業他社の運営に積極的に関与することは、重要な営業秘密の漏洩や顧客の奪取によって使用者の正当な利益を侵害する(また
はその蓋然性が高い)行為であるから、それを控えることは、やはり特別の合意や就業規則がなくても当然に発生する義務と
解すべきである。(土田道夫「労働契約法 第2版」有斐閣(2016))
退職後の競業避止義務に関する学説
現在の学説・判例の立場は、以下の通りです。
不正競争防止法にいう営業秘密を「使用し」た競業は、同法の規制によって(契約上の根拠がなくとも)制限可能となる。
これに対し、営業秘密を使用しない競業を制限するには、契約上の根拠が必要となる。(荒木尚志「労働法 第5版」有斐閣(2022))
競業避止義務の法的根拠としては、契約上の明確な合意(競業避止特約)または就業規則規定が必要となる。守秘義務と同様、退職労働
者が信義則上当然に競業避止義務を負うかが問題となるが、労働契約上の義務は契約終了とともに終了すること、競業避止義務が職業選
択の自由に対して強い制約度を有することを考えると、明示の根拠を要すると解すべきである。(土田道夫「労働契約法 第2版」有斐閣
(2016))
詳しくは、資料1-1をご確認ください。
<第5回 働き方・人への投資ワーキング・グループ(令和6年4月17日開催)/資料>
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_03human/240417/human05_agenda.html
※厚労省の提出資料はこちらです。
資料1-1 競業避止義務の明確化について
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_03human/240417/human05_0101.pdf