月90時間超の固定残業代は無効として提訴
「過労死ラインを超える「月90時間超の固定残業代」は無効だとして、男性社員5人が、令和元年(2019年)7月26日に、勤務先の飲料自販機会社に対し、未払い残業代の支払いを求めて、東京地裁に提訴した。」といった報道がありました。
原告5人は「自販機産業ユニオン」の組合員。このうち2人が記者会見を開き、「団体交渉を続けてきたが、合意にいたらなかったため訴訟を決断した」と説明したことから明らかとなりました。
訴状によると、同社では、地域別最低賃金に合わせて基本給を設定(例:埼玉県では基本給16万5千円以上、東京都では基本給17万2000円以上など)。
これに固定残業代11万5000円を付ける契約内容だったようです。
この固定残業代は、地域によって若干の差がでますが、どの地域においても90時間を超える残業代に相当するものになります。
そして、原告によっては多いときで月150~200時間の残業があったのに、同じ額しか払われていなかったということです。
残業代込みの賃金制度(固定残業代や基本給に残業代を含める制度など)については、訴訟の話題が絶えません。最高裁まで争われた事案もありました。
参考までに、最近の判例の傾向をまとめておきます。
●残業代込みの賃金(基本給に残業代を含める制度や固定残業代など)について、一律にそのような制度が無効というわけではないですが、通常賃金と残業代を明確に区別する必要があり、固定残業代などは、何時間分の残業代なのかも明確にしておくことが求められます。
この区別が曖昧であると、最低賃金割れにも気が付かないおそれがあります。
さらに、固定残業代などに含まれる残業を超えた残業については、別途、残業代を支払う必要があり、結局は、労働者の労働時間の管理を省くことはできないということになります。
また、
●基本給のうちの一定額を月間80時間分相当の時間外労働に対する割増賃金とすることは、公序良俗に違反するものとして無効とすることが相当である。とした高裁判決もあります。
これは、時間外労働を恒常的に労働者に行わせることを予定しており、労働者の健康を損なう危険があるという判断です。
今回提訴された事例は、訴状の内容が事実であれば、再計算が行われ、未払いとなっている残業代の支払が命じられることになりそうですね。
動向に注目です。