【裁判例】配転命令拒否を理由とする懲戒解雇ー有効
大阪地方裁判所令和3年11月29日判決
配転命令拒否を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例をご紹介します。
事案の概要
被告会社の親会社が業績悪化に伴い、グループ会社から3000人の希望退職を募る形での人員削減を発表した。原告が勤務していた拠点を廃止し、東京に一元化する削減策を発表し、転職支援制度を利用しない場合はT事業所への配転となる、と説明をした。
その後、平成31年3月1日会社は原告に配転命令を発し同15日までに着任することを命じた。それに応じなかったため、4月1日に再度配転命令を発したが、原告が応じなかったために懲戒解雇とした。
本件は大型の企業リストラ案件において行われた配転命令の効力と、それに従わなかった場合の懲戒解雇についての裁判です。
本件原告は、配転命令により転居が必要となったことから、配転命令に従わなかった。
状況:自家中毒(精神的な要因で体は健康なのに嘔吐を繰り返す病気)の子供(10歳)と母親(75歳)と同居していた
1.まず、配転命令の有効性が検討されます。
→ 事業所の閉鎖はやむを得ないところ、従業員の雇用確保のために他の事業所に配転することは、合理的であり、業務上の必要があったと認定した。また、無理な配転命令を発してそれに応じられないとして自主退職に持ち込もうとするような不当な目的は認められないと判断されています。
なお、本件で原告が勤務していたオフィスのあったビルにはグループ会社が入居していたが、そこで余剰人員を受け入れる余地はない状況であると裁判所は認定している(グループ全体で3000人のリストラを行っている状況でありやむを得ない)。また、原告の勤務態度に問題があることから、引き受けられる事業所が限られるとの認定もされている(労働関係の場合、判決の結果がどうあれ労働者に問題があると認定されることも多い)。
2.続いて配転が著しい不利益を与えるものかが検討されています。
→これが判旨で紹介した部分であるが、事情を説明する機会を放棄したものであって、原告の自己責任であるとされている。業務上このような事案では、事情を聴く「機会」を設けることが重要である。
また、その機会に説明をしたとしても、その内容は親の介護が必要という状況でもなく、子供についても体調を崩したときに迎えにいくことは特別なことではなく、原告の家庭の特殊事情とは言えないとした。
3.このようなことから懲戒解雇は有効とされた。
概要
大規模なリストラ策にともない、事業所の統廃合が行われ、配転命令が発せられたにも関わらずそれに従わなかった従業員に対して、配転命令は有効でありそれに従わないことは懲戒事由にあたるとして行った懲戒解雇は、配転に応じられない事情がないことなどから有効であるとされた。