障害を理由に退職 元社員が復職求め訴訟

「大手電子部品メーカーの元社員が、交通事故で重い障害が残ったあと、復職が認められず不当に退職させられたとして、8月17日、同社に雇用継続などを求め地方裁判所に提訴した。」という報道がありました。

訴状によりますと、元社員は平成26年5月の休日、バイク事故で首を骨折。下半身が完全にまひし、車いすを使うようになったそうです。その後、リハビリでパソコンが打てるようになり、昨年8月以降、復職を希望しましたが、会社は認めず今年2月に退職扱いになったということです。

ここで問題となるのが、会社側に、雇用する障害者に対して合理的配慮を提供する義務があるということです。これは、平成28年4月施行の改正で、障害者雇用促進法に規定されたものです。

ここでいう「合理的配慮」とは、たとえば、
・肢体不自由がある方に対し、机の高さを調節することなど作業を可能にする工夫を行うこと
・知的障害がある方に対し、図などを活用した業務マニュアルを作成したり、業務指示は内容を明確にしてひとつずつ行なったりするなど作業手順を分かりやすく示すこと などです。

会社は、このような配慮措置を、“過重な負担にならない範囲”で提供する義務があるとされています。
そして、このような合理的配慮を提供せずに、単に「障害者だから」という理由で、不利益な取り扱いをすることは、同法で禁止されています。

この訴訟の件では、元社員は、「適切な配慮があれば以前と同じように働ける」と訴えています。
確かに、たとえば、車いすで移動できるように通路を確保するといった配慮があれば、復職は可能なのかもしれません。
法令の内容を考えると、そのような配慮が、会社の過重な負担になるのか否かがポイントになりそうです。続報が出ましたら、またお伝えします。

これを機に、障害者に対する合理的配慮の提供義務について、今一度ご確認ください。
<雇用の分野で 障害者に対する差別が禁止され、 合理的な配慮の提供が義務となりました(厚労省パンフレット)>
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000099915.pdf